20221026

今日観た映画:荻上直子『川っぺりムコリッタ』(2021)

 仕事終わりに観た映画があまりに良すぎて、この日がどんな1日だったかあまり思い出せない。いつもの水曜日の業務と、11月の上映スケジュールの校正ばかりしていた気がする。

 

※以下『川っぺりムコリッタ』本編について触れています。

 

 やっと観ることができた『川っぺりムコリッタ』、本当にほんとうによかった。こんなにも朗らかに、生きることと死ぬことに向き合っている映画が今まであったかな。映画でもドラマでも、「死」を題材にしてしまうとどうしても重たくなりがちだけど、この映画では「死なない人はいません」という台詞とともに、ただそこにあるものとして「死」を描いていて、それがとてもよかった。わたしもいつかは死ぬんだけど、遺骨は海に撒かれるか花火として打ち上げられたいと思った。

 そして食事のシーンがめちゃくちゃ良かった。今まで映画で観た中でいちばん美味しそうな白米が出てきた。ムロツヨシが松山ケンイチに言う「山ちゃん(松山ケンイチの役名)、ご飯炊く才能あるよね」ってセリフが最高。美味しいご飯を炊けるってすごい才能だよね。お箸をポッケに入れてるムロツヨシも、すき焼き目掛けてダッシュで部屋に駆け込む松山ケンイチも画として良すぎた。
「ご飯ってさ、ひとりで食べるより誰かと食べたほうが美味しいのよ」
荻上監督の過去作『かもめ食堂』でも、「コーヒーは自分で淹れるより誰かに淹れてもらったほうが美味しい」というセリフがあって、これは事実でもあるんだけど、このときと似たような哲学を感じた。イカの塩辛をのせた白米を食べたくなった。

 

良すぎる食事シーン↓

 

 

 誰もが、見た目にはわからない生きづらさやおおきな悲しみ、人には言いたくない過去を抱えている。それを最初からお互いに全部知る必要はない。全部言わなくていいし、言わなくたって、わたしたちは一緒に食卓を囲んで美味しいご飯を食べれるし、困っていたら助け合える。わたしたちはどうしたって1人では生きていけないから、困っていたら助けを求めて声を上げること、困っている人には手を差し伸べられること、白米が美味しく炊けたら誰かと一緒に食べること、みたいな、誰かとゆるやかに連帯できる才能をもっと伸ばしていけたら良いなと思う。ゆるやかに連帯していける力は、簡単には生きるのが難しいこんな世界を、きっと生き抜く力になる。そんなことを優しく教えてくれる映画でした。
(映画のパンフレットに寄稿していた綿貫大介さんが「ゆるやかな連帯」という言葉を使っていてとても良いなと思ってここで拝借しています。)